kyouの答案

予備試験受験生が悩みながら書いた答案をpdfで(ほぼ)毎日晒していく勉強記録ブログ。答案構成のマインドマップも晒してます。内容も見てもらえたら嬉しいですが、「毎日書いてるね」と思ってもらえるだけで嬉しいです。

『事例問題から考える憲法』第21問(憲法13条後段、プライバシー権)の答案を書き直してみました。(1回目)

 

 

【はじめに】

今回は答案の書き直し記事です。

 

kyoulaw.hatenablog.com

上記の記事で答案を上げたところ、今年司法試験に合格した友人がこのブログを見ていてくれて、今まで上げた5通を詳細に添削してくれました。サプライズというか全く予想してなかったので、本当に嬉しかったです。

内容的には結構ボコボコにされましたが(笑)、めちゃくちゃ勉強になったので早速書き直してみようと思います。今回はその3通目です。

その友人には本当に感謝しかない。ありがとうございます。

ちなみに上記記事で書いた答案はこちらです。

drive.google.com

 

【書き直し答案】

1、助言の趣旨

Xは、警察がXの嫌疑が晴れて釈放された後も自己のDNA型情報を整理保管する行為(本件行為)はXの幸福追権(憲法(以下略)13条後段)を侵害するもので違憲であると主張すべきである。*1

2、本件行為のよる憲法上の権利の制約

⑴Xが問題としているのは、自己のDNA型情報が国家に整理保管されない自由である。

ア、DNA型情報とは、それ自体では個人の道徳的自律に直接関わる情報ではないが、指紋と同じく万人不同性・終生不変性という性質を有し、その管理・利用方法次第では個人の私生活あるいはプライバシーが第三者に開示・公表される危険がある。その意味で、DNA型データベース制度は国民の私生活上の自由と密接に関連するものといえる。*2

イ、憲法13条後段は国民の私生活上の自由は「幸福追求」する権利として公権力に対しても保護されることを規定している。よって、個人の私生活上の自由の一つとして、個人情報を濫りに第三者に開示・公表されない自由は保障される。

ウ、よって、Xの自己のDNA型情報が国家に整理保管されない自由も開示・公表されない自由との関係において13条後段で保障される。

⑵では、本件行為はかかる自由を制約するか。

ア、たしかにDNA型情報の整理保管行為はあくまで個人情報の管理・利用行為であって開示・公表そのものとはいえない。しかし、管理・利用の方法次第でその危険があることは前記の通りである。よって管理・利用行為が、前記の自由への制約にあたるかは、当該行為の諸事情に照らして、当該情報が濫りに第三者に開示・公表される具体的危険があるかで判断すべきである。

イ、XのDNA型情報はDNA型記録取扱規則に基づき利用・管理されている。本件規則では前記情報を「犯罪捜査に資すること」を目的としており、これ自体は正当である。もっとも本件規則について、目的外利用や流出の対策防止が講じられてるか明らかでない以上は、整理保管されたDNA型情報が濫りに第三者に開示・公表される具体的危険がないとは言えない。

ウ、よって、本件行為はXの個人情報を濫りに第三者に開示・公表されない自由を制約しているといえる。*3

⑶よって、本件行為はXの憲法上の権利を制約しているといえるから、その憲法適合性は審査されるべきである。

3、審査基準

⑴権利の重要性

ア、DNA型情報は個人の道徳的自律に直接関わる情報ではないが、万人不同性・終生不変性を有しており、指紋以上に個人識別能力が高い。そして、本件のように現代では情報のデータベース化も可能であることを併せると、遺留サンプルとの照合によって公権力が個人の行動を網羅的・継続的に把握することも可能である。このような情報が犯罪捜査の場面で誤った利用をされれば冤罪を生み出す可能性も十分にありえる。また、DNA型情報は収集されること自体がまれであり、住所・氏名などの単純な個人識別情報と違って一定の第三者に開示されることが当然に予定されるものとも言えない。これらの点を考えると、DNA型情報は秘匿性が高く、とりわけ慎重に扱われるべき情報であると認められる。*4

イ、よって、XのDNA型情報を国家に整理・保管されない自由は、これを濫りに第三者に開示・公表されない自由との関係において十分尊重するに値する権利といえる。

⑵制約態様

ア、個人情報の利用・管理行為の制約の強度は開示・公表される具体的危険の程度で測られるべきである。しかし、DNA型データベース制度は住基ネット制度と違って、目的外利用や流出などの危険を防止するための法律根拠がそもそもない。このような大規模データベースの安全性を評価するにあたって検討すべき事項は、情報管理に関するガバナンス、システムの堅牢性など多岐に渡るのであり、専門的・技術的検討の要請が高い。この観点からすると、仮に警察内部の規則によって適切な利用・管理が図られているとしても、当該規則が国会等の厳格な審議を経ていない以上、十分な危険防止措置を図られていると認めることは出来ない。DNA型がとりわけ慎重に扱われるべき情報であることを考えても、公権力がかかる情報を管理・利用するにあたっては前記具体的危険の程度を測る前提として法律の根拠を要すると考える。

イ、よって、法律の根拠のない利用・管理行為である本件行為は、XのDNA型情報を濫りに第三者に開示・公表されない自由への重大な制約であるといえる。

⑶以上の検討により、本件行為の憲法適合性を審査するにあたっては中間審査が妥当する。具体的には当該行為の理由が重要であり、行為がその理由を達成するために適合的かつ相当でない場合、当該行為は違憲となる。

4、個別具体的検討

⑴本件行為の理由は、本件規則の目的に照らせば犯罪捜査に資するためであり、このような理由は犯罪の解決、ひいては国民の安全や社会秩序につながるものであるから、重要といえる。

⑵そして、少なくともXが窃盗の容疑で逮捕された時点では、そのDNA型を整理・保管して当該事件の遺留サンプルと被疑者XのDNA型を照合することは事件の解決のために必要なものであり、本件行為は前記理由に適合するものであったといえる。しかし、すでに当該事件におけるXの嫌疑は晴れており、現時点においてXの整理・保管することは前記理由に照らしても過剰と言うべきであり、相当とは言えない。

5、結論

よって、本件行為は憲法13条後段に反し、違憲である。

以上*5

 

【書き直しのポイント】

この問題の書き直しも時間かかりました。添削に照らした書き直しは、単に論文を書くよりもメンタル的にも結構疲れる気がします。

多分、好き勝手に書いて(いい訳がないのに無意識にそうして)るのに比べて、フォームの修正を気をつけないといけない分、疲れちゃうのだと思います。ただ、そこが今は一番重要なところと信じて頑張りたいと思います。

添削してくれた本人の許可ももらったので今回も添削コメントを引用しつつ、以下、書き直しのポイントをまとめます。

 

*1

『後段まで指摘しましょう。幸福「追求」です。漢字間違いは採点実感でも注意されているところなので侮れません。』
というコメントでした。添削前の論文では後段が抜けてて「幸福追及権」と書いていたのですね。恥ずかしい限りの基本的なコメントです。気をつけます。
 
*2
『「終生変わるものではない」という文章は、終生(=常に)変わるものではない→いつかは変わる可能性があるとも読めてしまうので、読み手の文章を読むスピードを無駄に遮ってしまってもったいないので、「終生変わらないものである」としたほうが分かりやすいと思いました。』
私の日本語はどうも周りくどくて、こういうことを書きがちです。ここは絶対直したいです。それに留まらず、そもそも「万人不同」「終生不変」という指紋押捺拒否事件の文言をバシッと書けば済む話だなぁ、と思い、改めました。
 
*3
『問題文に事情のないところで20行も使うのはもったいない気がしました』『答案の配分には気をつけた方が良いという趣旨の指摘です。』

本件ではたしかにほぼ事情がないということもあり、むりくり書いてたというのが実際のところです。最近思うのですがたくさん書くことは説得的に書くことと決してイコールではないので、この辺改めないといけません。

*4

『プライバシー外延情報とやらの定義づけはやはり必要と思います(秘匿性の低い外延情報・・・など?)。このように、定義を書くとDNAが外延情報に当たる根拠が示されていないことに気付けると思いますし、そのあとの文章を読むと、結論としては外延情報だが要保護性が高いという論理に果たして意味があるのかも疑問に思えてきます(要保護性が高いというのにわざわざ外延情報と定義づけする意味がよくわからなかったです。』
これは教科書的な知識に振り回されてしまった例だと思います。プライバシー固有情報やプライバシー外延情報という言葉は知識の整理や教科書などを読む際には有用だと思うのですが、私はまだ使いこなせてないのだな、と思い、判例をよく読んで、一つ一つ理屈を積み上げるつもりで書きました。あまりうまくいったとは言えないかもですが…
 
*5
青字についてなのですが、ここまで書いた5通の答案への添削全体を通じて、私の論文の欠点は論理が飛んでる点ではないかと思うようになりました。これは科目問わず気をつけないといけないのですが、特に憲法は理解がフワフワなのでその悪いところが文章にめちゃくちゃ出てるのだと思います。
そこで、前後の文の繋がりがわかるように、議論の中心となる概念についてはできるだけ文言を統一するように努めました。*4とも繋がるのですが、一つ一つの文章の繋がりがわかるような書き方をしっかりと身につけていきたいと思っています。そうすることで、自分自身も論理の飛躍が気づきやすくやるんだろうと思ってます。
 
 
こんなところでしょうか。
以上です。