kyouの答案

予備試験受験生が悩みながら書いた答案をpdfで(ほぼ)毎日晒していく勉強記録ブログ。答案構成のマインドマップも晒してます。内容も見てもらえたら嬉しいですが、「毎日書いてるね」と思ってもらえるだけで嬉しいです。

『事例問題から考える憲法』第27問(憲法22条1項、憲法31条)の答案を書き直してみました。(1回目)

 

 

【はじめに】

今回は答案の書き直し記事です。

 

kyoulaw.hatenablog.com

 

上記の記事で答案を上げたところ、今年司法試験に合格した友人がこのブログを見ていてくれて、今まで上げた5通を詳細に添削してくれました。サプライズというか全く予想してなかったので、本当に嬉しかったです。

内容的には結構ボコボコにされましたが(笑)、めちゃくちゃ勉強になったので早速書き直してみようと思います。今回はその2通目です。

その友人には本当に感謝しかない。ありがとうございます。

ちなみに上記記事で書いた答案はこちらです。

drive.google.com

 

【書き直し答案】

第1、Yは暴排条例の利益供与禁止規定(以下、本件規定)は以下の理由により合憲であると主張すべきである。

第2、Xとの関係

1、Xの人権享有主体性

Xは法人であるため、その人権享有主体性が問題となる。しかし、以下述べる憲法(以下省略)31条と22条1項で保障される権利についてはその権利の性質に照らして法人を保障しない理由はなく、Xについても保障される。

2、本件規定と31条の関係 *1

⑴Xは、本件規定の「利益供与をしてはならない」という文言はあいまい不明確ゆえに31条に反して違憲であると主張するだろう。

明確性の原則

ア、刑罰法規であれば、あいまい不明確ゆえに当該法規が憲法31条に反すると言えるかは通常の判断能力を有する一般人の理解において、具体的な場合に当該行為がその適用を受けるかの判断が可能かでどうかで判断すべきである。

イ、もっとも、本件規定は行政法規であり刑罰法規ではなく明確性の要請は少ない。また、一般に不明確ゆえの表現に対する萎縮的効果が懸念される表現規制でもない。よって、本件規定の憲法31条への適合性の判断は前記基準は厳格に求める必要はない。具体的には、勧告処分以前にまで明確性が要求される必要はなく、権利制限されうる公表処分までに前記基準を充足すれば本件規定による公表処分は合憲である。

ウ、Xには公表処分前の勧告時点で、Aが開催するパーティー暴力団が団体として行う組長襲名披露パーティーであり、その予約を受ける行為が「利益供与」にあたることは伝えられている。このような具体的な流れに沿うと、公表処分以前に通常の判断能力を有する一般人の理解において、かかる行為が「利益供与」にあたり本件規定の適用を受けるかの判断は可能であったと言える。

⑶したがって、本件規定は31条との関係において合憲である。

3、本件規定と憲法22条1項の関係

⑴Xは、本件規定はXの「職業選択の自由」を侵害するので22条1項に反して違憲であると主張するだろう。

憲法上の権利の制約

ア、Xが問題としているのは、Xが誰とどのような内容の契約をするかを決める契約締結の自由である。*2

(ア)これは民法521条においても認められており、Xがホテル事業者という職業を遂行をする自由の中心をなすものである。憲法22条1項は明示的に「職業選択の自由」を保障するが、これは職業の開始・継続・廃止のみを意味するのではなく、職業の内容・態様を決定する職業遂行の自由をも包含するものと考えるべきである。

(イ)よって、Xの契約の自由は22条1項で保障される。

イ、では、本件規定がXの契約締結の自由を制約するか検討する。

(ア)本件規定では「規制対象者又は規制対象者が指定した者」(以下、暴力団関係者)と「利益供与」となる契約を禁止しており、これは事業者が誰と契約するかを規制する規定である。

 さらに本件規定では、「利益供与」を防止する措置をとるよう勧告され、これを無視すればその旨を公表されると定められている。これは暴力団に親しい事業者と公表されるに等しく社会的信用が低下するものであるから、これを避けるためには事業者は前記規制に従わざるを得ない。

(イ)よって、本件規定はXが誰と契約するかを決める契約締結の自由を制約するものである。

ウ、よって、本件規定はXの憲法上の権利を制約するものであるから、その憲法適合性は審査されるべきである。

⑶審査基準

ア、権利の重要性

 職業とは、個人の生計維持と社会的分業の意義を有するのみならず、自己の個性を発揮するという個人の人格的価値と不可分の関連を持つ。そして、このような職業を遂行することが契約を締結し履行することが大部分を占める点、民法上明示的に認められる点を考えると、契約締結の自由は重要な権利と言える。

イ、制約態様

 たしかに本件規定は、県内事業者に暴力団関係者に対する利益供与を禁止する者であり、誰と契約するかについて直接の制約をしている。しかし、無数に想定できる契約の相手方から暴力団関係者のみを禁止するにとどまるし、「正当な理由がある場合」は除外されている。そして、効果においても刑事罰ではなくあくまで公表にとどまっており、公表を受忍すれば相手が暴力団関係者であっても契約締結自体は可能である。これらから考えると、本件規定による契約締結の自由に対しての制約は重大とまでは言えず、一定程度にとどまるものと言える。

ウ、立法裁量

(ア)職業とは、前記の通り重要と認められるが、一方で社会的相互関連性があり「公共の福祉」(同条項)による制約を受けざるを得ない。経済的自由に対する制約は、一般に多種多様で専門的技術的性格を有し、裁判所の審査能力との関係からしても、精神的自由に比べて、立法裁量に委ねるべき要請が強い。よって、その裁量の広狭については事の性質に応じて決すべきである。*3

(イ)本件規定の目的は、事業者に対して暴力団関係者への利益供与を禁止し、もって社会から暴力団を排除することにあると考えられる。かかる目的は社会の公共の安全と秩序の維持する消極目的であると言える。消極目的規制に対しては、積極目的規制と違って政策的・専門技術的判断に委ねられるところが少なく、裁判所によっても審査が可能であると言えるから、立法裁量は狭いと考えるべきである。*4

エ、以上の検討を踏まえると、本件規定の憲法適合性の審査するにあたっては中間審査基準が妥当する。具体的には、立法目的が重要であって、規制手段が立法目的に適合的かつ相当でなければ本件規定は違憲である。

⑷個別具体的検討

ア、立法目的

前記の通り、本件規定の目的は社会から暴力団を排除することであると考えられる。暴力団はその集団としての威力を背景に反社会的活動をする団体であることが認められ、社会から暴力団を排除することはその他の国民の安全や安心につながるものとして重要と言える。

イ、規制手段の目的適合性かつ相当性

(ア)本件規定の規制手段は暴力団関係者への利益供与を禁止することである。利益供与を禁止することによって暴力団の資金源をなくせば、反社会的活動をする資金を失うのであるから、反社会的活動は減少していくことが見込まれる。よって、規制手段の目的適合性は認められる。

(イ)そして、本件規定は一律に利益供与を禁止している。これは一見過剰に思えるが、暴力団が多種多様な手段をもって資金を獲得している点を考えると、目的達成のためには利益供与を広く禁止せざるを得ない。よって、目的に照らして規制手段が過剰とは言えず、相当と認められる。

⑸よって、本件規定は22条1項との関係において合憲である。

第3、暴力団との関係

1、Xは暴力団の「結社」の自由を侵害する本件規定は21条1項に反して違憲であると主張するだろう。

2、憲法上の権利の制約

たしかに暴力団にも「結社」の自由は保障されうる。そして、利益供与すれば公表されるとなれば暴力団と契約する事業者はほとんどいなくなることを考えれば、暴力団自体もその生活上の困難を強いられ、結社の自由を行使し得なくなると予想される。よって、本件規定は暴力団の結社の自由を制約するものといえるので、憲法上の権利の制約は認められる。

3、Xによる第三者権利主張の可否

ア、しかし、日本の司法が付随的審査制を採用していることからすれば、第三者の権利主張は原則的には認められないと考えるべきである。具体的には、当該事件で第三者の権利主張を認めないと第三者の権利が適正手続を経ずに制約されるなど極めて例外的な事情がない限りは認められない。

イ、そして、本件ではそのような事情はないので、Xは本件規定の21条1項の違憲性を主張できない。

以上

 

【書き直しのポイント】

なんかやたら時間かかったというか。めちゃくちゃ悩みましたねぇ。

ただ、他の科目でも何回も悩みながら書き直してなんとかかんとか書き方を身につけたてきた気がするので、これも必要な過程だと信じて頑張ります。

添削してくれた本人の許可ももらったので添削コメントを引用しつつ、以下、書き直しのポイントをまとめます。

*1

『31条の検討は、かなり形式的な文面審査をすることになるので、事案に即した検討をする前にすべき性質の事項だと思っています』

最初に書いた論文では31条を後回しにしたのですが、こういう指摘をもらって直しました。そう言えば、文面審査から…みたいなことは今まで何度も耳にしてた気はするのですが、意味がよくわかっていなかったので…笑 今回やっと意味がわかりました。

 

*2

『権利設定は難しいところですが、自分が解くとすれば、民法521条で契約締結の自由と契約内容の自由が明文化されたので、この条文を手掛かりにするとわかりやすいのかなと思いました。しかも、契約の相手方を選ぶ自由と設定すると、それが職業の内容や遂行にどう影響するかを丁寧に認定する必要があり、問題をより難しくしている印象すらあります(25~27行目の認定では説明不足な気がします。他に契約してくれる人がいれば経営は成り立つわけですから・・・)。ここは、単に契約締結の自由の侵害と捉えても良いのかなと思いました。』

このコメントは眼から鱗でしたね。この条文知ってたのに思いつかなったという点と、保障される権利をどう設定するかで全体の出来が変わるという点で。たしかに私の設定だと書きづらくて仕方なかったのですよね。この辺はもっとうまく設定できるようにしたいと思いました。

 

*3

『裁量の根拠の認定については、令和二年司法試験の採点実感において、「審査基準の定立において,経済的自由に対する制約は,一般に,内容が多種多様で,専門的技術的性格を有し,裁判所の審査能力との関係からしても,精神的自由と比べて,立法裁量に委ねられるべき要請が強いという点をきちんと押さえずに,審査基準の定立を行っている答案が一定数あった。」と指摘されており、ここの文章をそのまま覚えて使えば、コンパクトかつ的確に論述できると思います。あまり長く書きすぎないのも肝要な部分かと思われます。』

恥ずかしながら採点実感はほとんど読んだことがないので、こういう論証に活かせる記述もあるのを知りませんでした。予備試験前でもどっかのタイミングで読まないといけませんね。

 

*4

『消極目的の定義を踏まえた論述をすると良いと思いました。定義はもう少しはっきり示すとよいです』
これは多分、添削された5通全てに言える指摘だったと思います。私の憲法論文はフワッフワッとしてる自覚があるんですけど、この辺りが原因なんでしょうね。覚えることはしっかり覚えて使っていかないとですね。
 
*5
『「実質的関連性」という言葉だけで審査基準とするのは危ないです。後ろのあてはめでは適合性とか、相当性に当てはめて検討しているので、審査基準でも「適合的かつ相当であることを要する・・・」みたいな感じでやった方が良いと思いました。ちなみに、「危ない」というのは、そもそも文章として実質的関連性なるもの定義づけもないまま三段論法を展開されても意味が通じないというだけでなく、あてはめの事情も拾いにくいという弊害があることを意味しています。』
 
これもすごく参考になりました。どうにも楽をしようとしてたな、と。必要なことはしっかり記述していきたいと思いました。
 
個人的にはナンバリングを細かくやりすぎただろうかというのはありますが。
まあ、この辺も書いていきながら感覚を掴めたらいいな、と思っているところです。
いや、憲法難しいです。けど、前よりは教科書等を読んでても芯を食ってる読み方が少しずつできてる感覚があります。
まだまだですが、もっと頑張ります。
以上です。